紹介記事 : InterLab No.51 2003.1月号紹介

特集I 産学官連携の新時代を拓くNPO 特定非営利活動法人 大田ビジネス創造協議会(OBK)
1. OBKの発足
 大田ビジネス創造協議会(OBK)は以下の目的と志を同じくする有志が集まって1998年4月に東京都大田区産業プラザ内で発足した。
1) 中小企業と各大学や研究機関との交流促進を通じて、新事業創出の橋渡し役となる。
2) 中小企業やベンチャー企業の持つ技術を再評価し、育成することを通して企業再生、活性化を支援する。
3) 政府系機関や自治体、他の組織との密接な連携により、中小企業にとって必要な情報提供を行う。
4) 経営者セミナー、各種研究会など、起業家育成や経営者・社員の意識向上のための啓発事業を行う。
 1998年8月に通産省の「新規成長産業連携支援事業」の助成対象に認定され、地元の東京工業大学TLOとの連携の下で活動を続け、2001年8月に東京都にNPO申請を行い、同年12月正式にNPO認可を取得した。

2. 産学官連携の現状と課題
 1990年から日本経済は未曾有の不況低迷状態に陥り、1985年に44万ケ所あった製造業の事業所数は2000年には34万に減少し、従業者は1991年の1,140万人から918万人に激減している。このような日本経済を現状から脱却させるためには単に産業構造だけではなく、政官、学をも含めた国の機構全体を21世紀型に変革しなければならない。そのためにも産、学、官の連携は必要不可欠の条件である。
 すでに政官レベルでは先進技術創出のための「科学技術基本法」の制定や大学の特殊法人化、新産業創出のための各種施策や助成制度など数多くの施策が始まっているが、まだこれらの施策が円滑に運用され、新事業や新たな雇用の創出につながるまでには至っていない。
 一方大学を中心とする学術分野では法人化に向けての組織や運営方法の改革、大学の自立と産学連携のためのTLO設立が相次いでおり、2002年10月現在の設立数は28大学に達している。それらの中にはすでに特許収入等によって独立採算性が確保され始めたTLOも出始めてはいるが、大半は交流会やセミナーなどのセレモニーに終始しているものも多く、本当に新産業の創出の原動力となり得るのかどうかはまだ明らかではない。
 一方産業界においては1990年代から続く長期の景気低迷によるリストラを続けた結果、研究開発資金と人材の両面で新技術、新製品を創出するための研究開発力が著しく低下している。特に固有の技術力によって実質的に日本経済を支え続けた製造・加工下請け中小企業は、長期にわたる受注量と受注価格の低下によって息絶え絶えの状態に陥っているところも多い。このような企業に向かって「市場競争力のある新技術・新製品の創出」を訴えてみても、企業だけでそれを推進することは困難である。
 以上のように、産学官は連携の前にまずそれぞれのシステムを「現状維持型」から「改革・創造型」に変革する必要がある。現状ではいずれも自らのメリットの確保を最優先しての「産学官連携」への参加であり、利害を超えた共通の目的意識と真の「連携動作」への脱皮が求められる。

3.OBKの活動の特色
 当面の産学官連携を円滑に進め、新事業創出や企業再活性化を早く実現するには、高い志と目的意識をもった「非営利組織」を産学官の中心に置いて、政策・制度の運用支援、大学発の技術の評価と実用化推進(適切な受け皿の発掘)、企業側のニーズの研究課題化など、三者の境界領域の往来に必要な業務を横断的に遂行する必要がある。
 OBKは図に示すように、まさにそのために存在し、高い志とノウハウをもつ人材を多数擁して活動するNPOであり、現在下記の事業を行っている。
1) 中小企業と研究期間との仲介事業
 中小企業にとって「敷居が高い」とされる大学、研究期間との橋渡し役
2) 技術評価・育成事業
 豊富な知識・経験をもつ技術・経営コンサルタントが企業の技術診断や経営分析を行い、経営革新や新商品開発、業務拡大を強力に支援
3) ベンチャーマインド創造事業
 東京工業大学をはじめとした各提携教育機関・組織の中で起業家育成のためのサポート活動を実施
4) 事業創出のための啓発事業(前記)
5) 会員への特典サービス事業

■文:特定非営利活動法人 大田ビジネス創造協議会(OBK)
 理事 技術評価・育成部門長 高田紘一

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