紹介記事 : 野村週報 天眼鏡 2003年7月7日紹介
- 2012.05.22
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匠のネットワークで新しいモノづくり
◆日本の町工場のモノづくり技術は世界一といわれた。だが、IT化、自動化、競争激化による価格引き下げの流れの中で、苦しい立場に追い込まれた工場も多い。起死回生を狙って優れた技術を持つ「匠」がネットワークを組み、独創性を生かして新しいモノづくりを始める動きが各地で起きている。
◆水上飛行機開発のために結束したのは、東京都大田区の中小企業。全国中小製造業にも呼び掛け、約30社がこのプロジェクトに参加する見込みだ。NPO(非営利組織)の大田ビジネス創造協議会(OBK)及び、中小企業130団体・社が加盟する神奈川県異業種グループ連絡会議が推進役を務める。東京大学大学院教授ら専門家の協力も得て、3年後をめどに小型水上飛行機を完成させる計画だ。
◆なぜ、水上飛行機なのか。OBKにかつて国産飛行機YS-11の開発に携わった人がいて「白分たちで飛行機をつくってみよう」ということになった。水上飛行機なら滑走路を新たに造る必要がない。離島への乗り入れも簡単で、災害救助目的にも使える。また、羽田空港に近く、飛行機用部品メーカーが多いという地の利もあった。中にはロケットの先端部の形状を整える(株)北嶋絞製作所のような技術力に優れた中小企業もあり、ネットワーク化で匠の技を結集すれば、夢の実現も不可能ではないであろう。
◆手始めに遠隔操作可能の無人小塑飛行機を開発し、地上観測用などに販売する。開発技術の蓄積を進め、2~4人乗りの小型機の開発につなげる。将来は40~60人乗りの中型機の開発に挑戦し、この飛行機を操縦できる人材を育てる訓練学校も手掛けたいと、夢は膨らむ。
◆科学技術ジャーナリストの赤池学氏は著書『匠のたくらみが町工場も日本もアジアも救うんです。』(ウェッジ刊)の中で、優れた技術を持つ中小企業のネットワークの事例を多数紹介している。夢をあきらめずに協働する匠たちの姿に、日本再生の可能性が見えてきた。
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