紹介記事 : 日本経済新聞 2003年7月7日紹介
- 2012.05.22
- NEWS
宇宙関連部品 供給基地に
京浜工業・大田区(中小集積) 共同開発・受注に活路
「京浜臨海部工業地帯を宇宙関連部品の供給基地にしたい」。四月下旬、横浜市内で開かれた宇宙関連部品の共同生産プロジェクトの説明会。横浜市や川崎市などの中小部品メーカー約五十社を前に、旗振り役である中小支援団体の神奈川県異業種グループ連絡会議(異グ連、横浜市)の芝忠事務局長は呼びかけた。
異グ連は宇宙開発事業団(NASDA)や特定非営利活動法人(NPO法人)の大田ビジネス創造協議会(OBK、東京・大田)と連携。年内にも横浜、川崎の京浜工業地帯と東京・大田区の中小企業五十社程度で、電子部品やエンジン部品などロケツトや人工衛星に組み込む部品の共同受注組織をつくる。将来は新製品開発から組み立てまで一貫して請け負える体制を築きたい考えだ。
異グ連などの呼びかけに応じ、これまでに三十社以上がプロジェクトヘの参加を決めた。電子部品やエンジンの軸受け部品、弁のメーカーなど業種は多岐にわたる。人工衛星の太陽電池用アンテナを製造したことがある東海技研(川崎市、川久保洋社長)は「応用分野をもっと広げられないか探りたい」と話す。
京浜工業地帯は宇宙関連部品の納入実績を持つ企業も少なくないが、大半が少量生産で単独で採算を律るのは難しい。NASDAが認定した宇宙関連部品約三百五十種類のうち半数近くが生産中止になったという。
それだけに複数メーカーでの共同生産というプロジェクト実現への期待は大きい。国産H2型ロケツトの先端部品を供給したことがある北嶋絞製作所(東京・大田)の北嶋一甫社長は「様々な得意分野を持っている中小企業が集まれば、コスト面などで大きな利点がある」と指摘する。
これまでは大手メーカーの下請けとして宇宙関連部品を製造する中小企業が大半だった。今回のプロジェクト参加をきっかけにNASDAから人工衛星に使う燃料計用調整弁を直接受注しようと交渉を始めた企業も出てくるなど、新たなビジネスが動き始めている。
全国有数の中小企業の集積地として知られる京浜工業地帯と東京都大田区だが、中国などへの生産移転の波は容赦なく押し寄せている。横浜市の鶴見区と神奈川区、川崎市川崎区を合わせた「京浜三区」の事業所数は二〇〇一年時点で約三万二千と、十年前に比べて一三%減少。東京都大田区も二〇〇〇年末時点の工場数は六千百六十五で、ピークの八三年に比べて三二・九%減った。
一方で、宇宙関連機器の二〇〇二年の市場規模は三千五百億円程度とされるが、「宇宙関連部品は航空機器の部品にも応用できる。潜在的な市場規模は一兆円以上だ」(芝事務局長)と期待は大きい。
宇宙関運部品の共同生産プロジェクトは走り出したばかり。品質管理や技術革新への対応など課題は山積しているが、産業の空洞化を埋める新たな地場産業に成長する可能性も秘めている。(横浜支局羽鳥大介)
-
前の記事
紹介記事 : 野村週報 天眼鏡 2003年7月7日紹介 2012.05.22
-
次の記事
紹介記事 : 朝日新聞大阪版 2003年8月29日紹介 2012.05.22