紹介記事 : 日本経済新聞 2003年12月3日紹介
- 2012.05.22
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水上飛行機開発が具体化
東京都大田区の中小企業が取り組んでいる水上飛行機の開発プロジェクトが具体化してきた。このほど事業計画の策定に着手。二年後をめどに飛行機を製造する共同出資の新会社を設立し、レジャー用などに売り込む。中小企業が持つ構造設計や金属加工などの技術力を結集して航空分野に参入し、脱下請け狙う。
プロジェクトは大田区や品川区などの中小企業で構成する特定非営利活動法人(NPO法人)の大田ビジネス創造協議会(東京・大田、磯収二理事長)が進めている。今年三月、協議会内に水上飛行機開発の専門部会を設け、飛行揚や関連研究機関などを視察してきた。
事業化の本格着手に先立ち、三日には大田区内で地元企業などが参加するセミナーを開催する。今後の航空機産業に関する公演のほか、水上飛行機開発プロジェクトの計画も説明し、事業推進に役立てる。
開発に備え、研究活動も本格化。十一月に有人機の八分の一程度の縮尺木製模型を作成、東海大学の研究設備を使った風洞実験を実施した。今後も素材研究や市揚調査などに取り組む。
製品化の第一弾として、全地球測位システム(GPS)を活用し、遠操作する小型無人機を開発する。来年十月に横浜市で開く国際航空宇宙展に出品する。地上観測用などの需要を見込む。
小型無人機でノウハウを蓄積し、三年後に実際の有人機を開発する方針。二年後をめどに資本金一億円程度の共同出資会社を設立し、製造に当たる。新会社には航空や自動車関連などの中小に加え、大手企業からも出資を仰ぎ、計十-十五社程度の参加を目指す。
有人機は全長八メートル前後二-四人乗り。北米やアジア向け輸出を主体にレジヤーなどの用途を想定する。販売価格は一機四百万-五百万円。生産が軌道に乗れば年十数機の販売を目指す。機体には、一般的なアルミ合金を避け、水中でも腐食しにくい金属と樹脂を組み合わせた複合素材を採用する。動力は電動や新開発する小型ジェットエンジンなどを検討している。
大田区は全国屈指の製造業集積地だが、地元の中小企業にとって、大手企業の下請け体質からの転換と後継者確保は最大の経営課題だ。
同区の中小製造業は納入先の大手企業の中国シフトで地盤沈下が進行。工場数は六千百六十五(二〇〇〇年末時点)とピーク時の一九八三年に比べて三三%減少した。技術力は高いが最終製品を持たないため、納入先のコストダウン要求に耐えきれず廃業や倒産が増えている。
精密加工などの技術が生かせる航空宇宙分野への参入はそんな町工場にとって再生への足掛かりになるとの期待が強い。国内の市場規模四千億円とされる宇宙機器産業への参入では、大田区と横浜市、川崎市などの中小部品メーカーが連携してロケットや人工衛星部品の共同受注を目指す計画が進む。
水上飛行機の開発を進める大田ビジネス創造協議会の磯収二理事長は「飛行機という最終製品を作ることで、利益をを確保できる体質強化とともに、技術力をアビールし後継者確保に役立てたい」と期待する。
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