紹介記事 : 日本経済新聞 2003年6月30日紹介

就業体験、中小企業で
大学との連携広がる 新卒採用の契機に
 大学が非営利組織(NPO)などと組んで、学生に中小企業でインターンシップ(就業体験)に取り組ませようという動きが広がり始めた。中小企業が採用や共同研究などで大学、学生とのつながりを深めたいと前向きで、大学も実践的な教育の場として関心を強めている。「就職先として中小企業を検討してもらうきっかけになれば」という点で両者の思惑も一致している。
産学連携推進組織の首都圏産業活性化協会(TAMA協会、東京・八王子)は約五十の大学などで構成する関東地域インターンシップ推進協会(東京・港)と協力して進めている中堅・中小企業向けインターンシップを本格化する。それぞれ大学への呼びかけや企業への受け入れ依頼などを強化。これまで年問約二十人の実績があるが、今夏は倍増を目指す。
 期問は二週問から三カ月。電機、機械など研究開発型の企業が一社一-三人を受け入れる。企業が研究課題を与え、学生が取り組む内容とする。六月二十四日に両協会が開いた説明会には、六十五人程度の学生と約二十杜の企業が出席した。
 この事業を拡大するのは「新卒の技術者の採用に結びつけたいという企業の声が強まっている」(TAMA協会)ため。昨年学生を受け入れたトラック用荷台メーカー、東洋ボデー(東京・武蔵村山)の中条守泰社長は「最近の大学生が会社に何を求めているかを把握したい」という。同杜で製造、営業などの仕事を体験した東京都立科学技術大学四年生の上田寛之さんは「仕事の持つ意味や会社の仕組みを理解することができた」と振り返るなど、学生の評価も高い。
 中央大学、明治大学、東京電機大学の三大学は、東京都大田区の中小企業で組織する特定非営利活動法人(NPO法人)、大田ビジネス創造協議会(OBK、磯収二理事長)と連携。来春にもOBKが選定した技術力の高い企業でインターンシップを実施する方向で検討を始めた。
 金型、切削加工など五杜程度を対象に一社一-二人の学生を派遣する。「モノづくりの体験や、経営者の身近で実践的な経営を学ぶ機会は学生の教育・研究に役立つ」と中大の関係者はその理由を話す。
 専修大学も来年書休みから在学生の中小企業でのインターンシップを実施する準備を始めた。受け入れ企業を見つけるため、首都圏の地方自治体に企業側との伸介を依頼する。派遣期問は一カ月以上、期間終了後には単位認定も検討する。
 背景にあるのは大学生の就職難。専大の関係者は「就職情報誌などに載っていなくても、優れた中小企業があることを知るきっかけになれば」と期待している。